「終活」2題 ~としまち研も向き合うべき課題~

2019年4月1日

 団塊の世代で一番若い昭和24年(1949年)生まれの方々も、今年で満70歳を迎えます。私が若い頃は、70歳の人といえば“いいお爺さん”“いいお婆さん”でした。しかし現代では、70歳を過ぎてもまだまだ社会のお役に立てる、老け込むには勿体ない年代になっています。

 以下、私が最近体験した2 つの実例をお話したいと思います。

 一つは、秘密証書遺言の立会人となったことです。遺言者は86歳、高齢化し体調も思わしくありません。相続人は複数いますが、「争続」にならないように遺言を残したいとのことで、税理士に相談して遺言書を作りました。その遺言書を、公証人の立会いのもと封筒に入れ、封緘のために私ともう一人の立会人、そして公証人が署名捺印、信頼できる税理士が銀行の貸金庫に保管し、将来遺言者が亡くなったときに、相続人の前で開封します。基本的には、その遺言に基づいて相続財産が配分されます。
 二つ目は、都下にお住いの70歳代後半の高齢者から、都市部の商店街にある小さな土地の売却を依頼されたことです。その土地単独では、小型車の駐車場程度には使えても、建物は建てられないほどの面積です。依頼主の高齢者には、娘さんが2人いますが、「私たちはその土地は残してもらいたくない」とはっきり言われたそうです。何とか買い手は決まりそうですが、珍しい事例です。
 いずれも不動産に関わることですが、「所有している不動産をどうするのが現実的か」という検討をされた上での行動であり、曖昧なかたちで不動産を残さない、いわば不動産の「終活」と言えます。
 昨年の4月からこの3月まで、10回の検討会と高齢者や関連組織などのヒアリングを行ってまとめた、「単身高齢マンション所有者の資産管理支援システム」の提案と一部共通するところがあります。
 この分野も「としまち研」が向き合うべき課題と思います。

(としまち研理事長 杉山 昇)

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